Monday 26 March 2012

Mona Hatoum



                                                                                  Mona Hatoum

Taishi Nobukuni x Kaori Nakano: talk



Mr. Taishi Nobukuni 



セントマーティンの初日に配布された紙には、ファッションとはこうだということが数行で書かれていました。
1.まず、ファッションとは、やわらかいものと堅いものなど、相反するもののミックスであるということ。
2.ファッションというのは、あなたが誰であるかということ、あなたが何者であるかの表明であるということ。
3.ファッションはまったくの主観なものである

「気づく」というのは、人になにかを見出したりすることなんですけど、それはすでに自分のなかにあるものなんです。気づく力は共感力です。人のことを自分と同じように思える力というか、そこにおいて「この人は美しいな」と思える力、それが気づく力ですね。服を着ていなくても、ファッションなんです。外から学ぶものは、結局、後付けでしかないですから。ファッションと仏教は似ているところがあって、なにかを学ぼうとしても学びようがないんです。私自身が何者なのかに行きつけるかという問題なので。セント・マーチンズでのハラスメントのような厳しい指導を通じて、僕は自分の殻をどんどん剥ぎ取られていきました。なんで剥ぎ取らなきゃいけないかというと、自分ではヒップな人間、ドロップアウトした人間のつもりだったにもかかわらず、ロンドンで感じたことは、どれだけ自分が日本の教育システムによってつくりこまれていたのかということ。自分がいかに真面目な人間なのか、ということだった。 

美術教育でいえば、イギリスの場合、基礎コースがあります。そこではまず、粘土や折り紙、お絵かきをするなかで、平面か立体か、立体のなかでもファッションか、建築か、陶芸か、というふうにじっくりと自然に方向をみつけていく。そうやっていく過程で純粋にファッションに行きついた人が、ファッションの現場にいるわけです。そんな人には、僕みたいな「枠組み教育」やメディア情報が詰まった状態の人間は、かなわないなと思ったんです。 

ちがうところから入ってきた人といえば、山本康一郎さんという有名なスタイリストがいます。学生のころから遊んでいて、東京のあらゆる店を知り尽くしていることでスタイリストになったような方なんですけど。山本さんは、ダメだしするときには「それはスタイリストっぽくてダメだろう」ってことを言います。「スタイリストがスタイリングしているみたいじゃないかよ」と。禅問答のようなんですけど(笑)。スタイリストは、あたかも仕事をしてないように見せる。それが一流のスタイリストなんです。 
スタイリストは、あたかも仕事をしてないように見せる。それが一流のスタイリストなんです。 

レイ・ペトリがいますね。バッファローというスタイリスト集団を率いて80年代のイギリスのカルチャーシーンに影響を与えた人です。ファッション業界の外にいた人たちが徒党を組んで殴り込みをかけてきたようなところがあったんですが。ベラスケスの絵画にインスピレーションを得ながら、道端にいる名もないけど美しい人たちを、美しく見せたんです。アウトサイダーへの共感が強かったんです。撮影する前には香水をつけてあげた。それくらいの愛情が強かった。アルマーニの広告ディレクションまで決まっていたのですが、エイズでなくなりました。晩年、ゴルチエは彼に特別な席をつくって、彼にコレクションを見せてあげた。そのくらい尊敬されていました。

スタイリング レイ・ペトリ Styling by Ray Petri


スタイリング アリスター・キー Styling by Alister Mackie

いま、モノがどこでつくられているかわからない時代ですよね。でも、佐々木さんのところでは、モノをつくっている現場の、言葉にならないあたたかみを感じたのです。それを残して、次世代へ伝えていきたいと思ったんです。 

アリゾナのインディアンに、ある儀式を受けたことがあるんですけど、そのときインディアンが話したのは、こんなことでした。「白人は、バッファローを見るとバッファローだというが、じつは見ていない。概念的にとらえていて、まごころで見ていない」。概念ではなく、心の目でありのままに見るのが大切だということですね。ファッションは共感です。既成の概念に曇らされず、心の目で見る訓練をしましょう。 

これからは成熟したもの、愛情があるもので、いいものしか残っていかないと思う。

地に足の着いたこと、人間にとって根源的に必要なことを選べばいいと思う。大工さんのように、人にとって必要なものを、確かな技術で作る仕事。確実に手ごたえを感じられるなにか。そういう「人にとって根源的に必要な仕事」に「気づく」ように、日々、心の目を磨いて過ごしてください。 

「以上、全て対談から抜粋」 リンク http://openers.jp/fashion/news/taishinakano.html?pg=2